人工透析で障害年金はいくら?原則2級・年84万7,300円〜と初診日の落とし穴を社労士が解説【2026年最新版】

人工透析なら、障害年金は「原則2級」です

国の認定基準に明記されています。問題は金額ではなく「初診日」――社労士が図解で解説

週に3回、1回4時間。人工透析が始まると、生活は一変します。仕事を減らさざるを得なくなった、通院のたびに体力を削られる、これから先の家計が不安――。透析を導入されたご本人とご家族から、そうしたお話をよく伺います。

まず知っていただきたいことがあります。人工透析を受けている方は、障害年金の等級では「原則2級」と国の基準に明記されています。「私の症状で本当にもらえるのだろうか」と悩む必要は、この点についてはありません。数ある傷病の中で、人工透析はもっとも判定がはっきりしている部類です。

ところが実際には、受給できるはずの方が申請にたどり着けていません。理由は障害の程度ではなく、まったく別のところにあります。「初診日」です。とくに糖尿病から透析に至った方の場合、初診日は透析を始めた日ではなく、何十年も前に糖尿病で初めて病院にかかった日まで遡ります。そのカルテは、もう残っていないことがほとんどです。

この記事では、山口県長門市の社労士が、令和8年度の受給額、透析開始から3か月で請求できる特例、初診日の落とし穴、遡及請求で過去5年分を取り戻す方法までを、図解8点で整理します。数字と基準の文言は、すべて日本年金機構の一次資料で確認したものです。

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1. 結論:人工透析は「原則2級」と基準に書かれている

障害年金の等級は、日本年金機構の「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」という国の基準で決まります。腎臓については第12節「腎疾患による障害」に定めがあり、そこにはこう書かれています。

(7)人工透析療法施行中のものについては、原則として次により取り扱う。

ア 人工透析療法施行中のものは2級と認定する。
 なお、主要症状、人工透析療法施行中の検査成績、長期透析による合併症の有無とその程度、具体的な日常生活状況等によっては、さらに上位等級に認定する。

出典:日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」第12節 腎疾患による障害(令和4年4月1日改正)

ポイントは3つあります。

1つめ。「2級と認定する」と言い切っています。他の多くの傷病では「〜を考慮して総合的に認定する」といった書き方が並ぶ中で、人工透析は例外的に明快です。検査数値がいくつだから何級、といった当てはめ作業が要りません。

2つめ。2級より上、つまり1級もあり得ます。長期透析による合併症がある場合や、日常生活の状況が特に重い場合には上位等級に認定するとされています。透析歴が長く、心不全や重い貧血、視力障害などを併発している方は、2級で確定と決めつけないほうがよい場合があります。

3つめ。就労していても等級は変わりません。基準に「働いていれば対象外」といった記述はありません。夜間透析を受けながら日中フルタイムで働いている方も、等級では2級として扱われます。

図1
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腎疾患による障害年金の等級と人工透析の位置づけ 1級は検査成績が高度異常で一般状態区分オの場合。2級は検査成績が中等度または高度異常で区分エまたはウの場合に加え、人工透析療法施行中のものが該当する。3級は検査成績に異常があり区分ウまたはイの場合で、障害厚生年金のみに存在する。 1級 検査成績が「高度異常」を1つ以上 かつ 一般状態区分「オ」(終日就床・常に介助が必要) 2級 この記事の 対象 ① 検査成績が「中等度」または「高度」の異常を1つ以上 かつ 一般状態区分「エ」または「ウ」 ② 人工透析療法施行中のもの 検査数値や一般状態区分にかかわらず、これだけで2級 3級 厚生年金のみ 検査成績が「軽度」以上の異常を1つ以上 かつ 一般状態区分「ウ」または「イ」 ※ 3級は障害厚生年金にのみ存在します(初診日に厚生年金に加入していた方)
人工透析は「2級」の枠に、検査数値とは別ルートで入ります。他の腎疾患が「検査成績」と「一般状態区分」の2つを掛け合わせて判定されるのに対し、透析中の方はその判定を経ずに2級と認定されます。ここが人工透析の最大の特徴です。

ただし「2級=必ずもらえる」ではありません

障害年金を受け取るには、①障害の程度のほかに②初診日が特定できること、③保険料の納付要件を満たすことの3つすべてが必要です。人工透析の方は①を難なくクリアしますが、実際に申請が止まるのはほぼ②と③です。この記事の後半は、その2つに紙幅を割いています。

2. 透析をしていない段階でも対象になる(検査数値で判定)

「まだ透析はしていないが、腎機能が落ちていると言われている」――この段階の方も対象になり得ます。透析前の慢性腎不全は、検査成績と日常生活の状態の2つを掛け合わせて判定されます。

2-1. 検査成績の3段階

基準では、次の検査項目の数値によって「軽度異常」「中等度異常」「高度異常」に区分されます。

図2
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慢性腎不全の検査成績と異常区分の対応表 内因性クレアチニンクリアランスは毎分20以上30未満が軽度異常、10以上20未満が中等度異常、10未満が高度異常。血清クレアチニンは3以上5未満が軽度異常、5以上8未満が中等度異常、8以上が高度異常。eGFRは20以上30未満相当は対象外、10以上20未満が軽度異常、10未満が中等度異常として扱うことができる。 軽度異常 中等度異常 高度異常 内因性クレアチニンクリアランス 単位:mL/分  ← 数値が小さいほど重い 10 未満 高度異常 10 以上 20 未満 中等度異常 20 以上 30 未満 軽度異常 血清クレアチニン 単位:mg/dL  ← 数値が大きいほど重い 3 以上 5 未満 軽度異常 5 以上 8 未満 中等度異常 8 以上 高度異常 eGFR(推算糸球体濾過量) 単位:mL/分/1.73㎡  血清クレアチニンの異常に「替えて」用いることが可能 10 未満 中等度異常 10 以上 20 未満 軽度異常 20 以上 区分の定めなし
数値の向きに注意してください。クレアチニンクリアランスとeGFRは「小さいほど重い」、血清クレアチニンは「大きいほど重い」です。eGFRは高度異常の区分が設けられておらず、最も重くて中等度異常までの扱いになります。
出典:障害認定基準 第12節 認定要領(4)①

2-2. 検査数値だけでは決まらない――「一般状態区分表」

ここが誤解されやすい点です。検査数値がいくら悪くても、それだけで等級は決まりません。もう1つ、日常生活がどの程度制限されているかを示す「一般状態区分表」との組み合わせで判定されます。

一般状態区分表

  • ア:無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの
  • イ:軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの(例:軽い家事、事務など)
  • ウ:歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの
  • エ:身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの
  • オ:身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

出典:障害認定基準 第12節 認定要領(5)

この2つを掛け合わせたのが次の図です。

図3
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検査成績と一般状態区分を掛け合わせた等級判定マトリクス 縦軸に検査成績の高度異常・中等度異常・軽度異常、横軸に一般状態区分のイ・ウ・エ・オを取った表。高度異常かつ区分オは1級。高度異常または中等度異常で区分エは2級。区分ウは2級と3級のどちらの例示にも含まれる。区分イはいずれも3級。軽度異常で区分エ・オ、中等度異常で区分オは基準に例示がない。人工透析療法施行中の場合はこの表によらず2級となる。 検査成績 × 一般状態区分 の組み合わせ(基準の例示) 検査成績 \ 区分 イ(軽労働可) ウ(時に介助) エ(半日就床) オ(終日就床) 高度異常 3級 2級 または 3級 (例示が重複) 2級 1級 中等度異常 3級 2級 または 3級 (例示が重複) 2級 例示なし (総合認定) 軽度異常 3級 3級 例示なし (総合認定) 例示なし (総合認定) 人工透析療法施行中の場合 → この表によらず「2級」 検査数値も一般状態区分も問われません。合併症の程度によっては、さらに上位等級もあり得ます。 ※ 基準は「各等級に相当すると認められるものを一部例示」したものです。表にない組み合わせも総合認定の対象になります。
透析前の方はこの表の左半分に入りやすく、3級(障害厚生年金のみ)にとどまることが多いのが実情です。だからこそ、透析導入は「2級への切り替わり」という重要な節目になります。透析を始めたら、その時点で必ず年金の確認をしてください。

なお、初診日に国民年金だけだった方(自営業・専業主婦・学生・無職など)には3級がありません。透析前は対象外でも、透析導入で一気に2級=支給対象になるということが起こります。この切り替わりに気づかず、何年も申請しないままの方がいらっしゃいます。

3. いくらもらえるのか(令和8年度の金額)

金額は毎年度改定されます。令和8年度(2026年度)は、前年度から基礎年金が1.9%、厚生年金の報酬比例部分が2.0%の引き上げとなりました。以下は日本年金機構「障害年金ガイド 令和8年度版」の数字です。

3-1. 障害基礎年金(全員が対象)

区分昭和31年4月2日以後生まれ昭和31年4月1日以前生まれ
1級1,059,125円1,056,125円
2級(人工透析はここ)847,300円844,900円

3-2. 加算されるもの

加算の種類金額(年額)対象
子の加算(2人目まで)1人につき 243,800円18歳到達年度末までの子/20歳未満で1・2級の障害がある子
子の加算(3人目から)1人につき 81,300円同上
配偶者加給年金額243,800円65歳未満の配偶者(障害厚生年金1・2級のみ)

3-3. 障害厚生年金(初診日に会社員だった方)

初診日に厚生年金に加入していた方は、上の障害基礎年金に報酬比例部分が上乗せされます。計算式は次のとおりです。

報酬比例部分 = A + B

A:平均標準報酬月額 × 7.125/1000 × 平成15年3月以前の加入月数
B:平均標準報酬額 × 5.481/1000 × 平成15年4月以降の加入月数

※ 加入期間の合計が300月(25年)未満の場合は、300月とみなして計算します。若くして透析になった方が不利にならないための仕組みです。

出典:日本年金機構「障害年金ガイド 令和8年度版」

この300月みなしは大きな意味を持ちます。たとえば就職して3年目に透析導入となった方でも、25年勤めたものとして計算されます。

図4
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人工透析で2級に認定された場合の年間受給額の比較 障害基礎年金2級のみの場合は年額847,300円。子が2人いる場合は1,334,900円。初診日に厚生年金加入で平均標準報酬額30万円・300月みなしの場合は1,340,590円。さらに65歳未満の配偶者がいる場合は1,584,390円となる。 人工透析(2級)で受け取れる年金額の例(令和8年度) 0円 50万 100万 150万 200万 障害基礎年金2級のみ (自営業・専業主婦・学生など) 847,300円 障害基礎年金2級 + 子2人 (847,300+243,800×2) 1,334,900円 障害厚生年金2級(会社員) 平均標準報酬額30万円・300月みなし 1,340,590円 障害厚生年金2級 + 配偶者 (+加給年金額 243,800円) 1,584,390円 障害基礎年金 報酬比例部分 子の加算 配偶者加給年金額
初診日に厚生年金に加入していたかどうかで、年間50万円前後の差がつきます。だからこそ「初診日がいつか」は、金額を左右する決定的な要素になります。報酬比例部分は給与によって変わるため、上記はあくまで一例です。
金額の出典:日本年金機構「障害年金ガイド 令和8年度版」。報酬比例部分は平成15年4月以降のみの加入として概算。

障害年金は非課税です

障害年金には所得税も住民税もかかりません。額面がそのまま手元に残ります。年間84万7,300円は、月額に直すと約7万円。透析による通院や食事療法の負担を考えると、決して小さくない金額です。

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4. いつから請求できるのか――透析の「3か月ルール」

障害年金は、原則として初診日から1年6か月が経過した日(障害認定日)の状態で判定されます。この1年6か月という待機期間が、多くの方にとって重い負担になります。

人工透析には、この待機期間を短縮する特例があります。

イ 障害の程度を認定する時期は、人工透析療法を初めて受けた日から起算して3月を経過した日(初診日から起算して1年6月を超える場合を除く。)とする。

出典:障害認定基準 第12節 認定要領(7)イ

つまり、透析を始めて3か月経てば、その日を障害認定日として請求できます。1年6か月を待つ必要はありません。

ただし、カッコ書きが極めて重要です。「初診日から起算して1年6月を超える場合を除く」――この一文があるため、特例が使えるかどうかは初診日から数えて透析開始がいつだったかで決まります。

図5
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人工透析の障害認定日をめぐる2つのパターン パターンAは初診日から1年6か月以内に透析を開始した場合で、透析開始から3か月経過した日が障害認定日となり、その翌月分から年金を受け取れる。パターンBは初診日から1年6か月を過ぎてから透析を開始した場合で、障害認定日の時点では該当しないため事後重症による請求となり、請求日の翌月分からの支給となる。過去に遡っての支給はない。 パターンA 初診日から1年6か月以内に透析を開始 → 特例が使える 初診日 透析開始 障害認定日 この翌月分から支給 3か月 原則の1年6か月(ここまで待たなくてよい) 1年6か月 パターンB 1年6か月を過ぎてから透析を開始 → 事後重症による請求 初診日 障害認定日 (1年6か月) まだ該当せず 透析開始 請求日 この翌月分から支給 この期間は遡って受け取れません どちらのパターンになるかは「初診日がいつか」で決まります
日本年金機構の公式ガイドにも、人工透析を事後重症で請求する例が掲載されています(初診日 平成30年10月25日/障害認定日 令和2年4月25日は該当せず/人工透析開始 令和7年10月10日/請求日 令和7年10月25日 → 令和7年11月分から支給)。パターンBでは、請求が1か月遅れれば1か月分が消えます。
出典:日本年金機構「障害年金ガイド 令和8年度版」請求時期[例2]

パターンBの方は「1日でも早く」が効きます

事後重症による請求は、請求した日の翌月分からしか支給されません。過去には一切遡りません。「書類が揃ってから」「落ち着いてから」と先延ばしにすると、その分だけ確実に減ります。月をまたぐ前に出す――それだけで1か月分(2級なら約7万円)が変わります。

5. 最大の落とし穴:初診日はどこまで遡るのか

ここからが本題です。人工透析の障害年金で申請が止まる原因は、ほぼこれ1つです。

「初診日」とは、障害の原因となった傷病について、初めて医師の診療を受けた日をいいます。透析を始めた日でも、腎臓内科に紹介された日でもありません。その腎不全の「もと」になった病気で、最初に病院にかかった日です。

5-1. 原因疾患によって初診日は大きく変わる

障害認定基準は、腎疾患について次のように定めています。

(9)糸球体腎炎(ネフローゼ症候群を含む。)、腎硬化症、多発性嚢胞腎、腎盂腎炎に罹患し、その後慢性腎不全を生じたものは、両者の期間が長いものであっても、相当因果関係があるものと認められる。

出典:障害認定基準 第12節 認定要領(9)

「期間が長いものであっても」――ここが重要です。20年前の腎炎と今の透析がつながっている、と国が認めているということです。裏を返せば、初診日は20年前まで遡るということでもあります。

5-2. 糖尿病性腎症の場合

日本で透析導入の原因としてもっとも多いのが糖尿病性腎症です。ところが、上の(9)の列挙に糖尿病性腎症は入っていません。では関係ないのかというと、そうではありません。基準の別の節にこう書かれています。

(2)糖尿病患者の血糖コントロールの困難な状態が長年にわたると、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、糖尿病性壊疽等の慢性合併症が発症、進展することとなる。

(9)糖尿病性腎症を合併したものによる障害の程度は、本章「第12節 腎疾患による障害」の認定要領により認定する。

出典:障害認定基準 第15節 代謝疾患による障害 認定要領(2)(9)

つまり基準の構造として、糖尿病性腎症は「糖尿病の慢性合併症」と位置づけられているわけです。このため実務上、糖尿病と糖尿病性腎症は相当因果関係があるものとして扱われ、初診日は「糖尿病で初めて医師にかかった日」になります。

図6
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原因疾患別に見た初診日の考え方 糖尿病性腎症の場合、初診日は健康診断で血糖値を指摘され内科を受診した日まで遡り、透析開始まで20年以上離れることがある。慢性糸球体腎炎の場合も腎炎で初めて受診した日が初診日となる。一方、腎臓とは無関係の別の傷病で通院していた履歴は初診日にならない。 ケース1 糖尿病性腎症(透析導入原因の第1位) 初診日 健診で血糖値を 指摘され内科へ (例:20年前) 腎症を指摘される (初診日ではない) 透析開始 (初診日ではない) この間ずっと1つの傷病として扱われる(20年以上のことも) ケース2 慢性糸球体腎炎・腎硬化症・多発性嚢胞腎・腎盂腎炎 初診日 学校健診の尿検査で 腎炎を指摘され受診 (例:30年前) 慢性腎不全へ進行 透析開始 「期間が長いものであっても相当因果関係あり」と基準に明記 初診日は「透析を始めた日」ではありません 腎不全の「もと」になった病気で、最初に医師にかかった日まで遡ります。 その日に厚生年金だったか国民年金だったかで、受給額が年間50万円前後変わります。
初診日が20年前・30年前になると、当時のカルテはほぼ残っていません。医師法上のカルテ保存義務は5年です。ここが人工透析の申請における最大の関門になります。

5-3. カルテが残っていない場合はどうするか

「20年前の病院はもう廃院した」「カルテは処分されたと言われた」――よくあるご相談です。それでも道は残っています。初診日を証明する資料は、カルテだけではありません。

使える可能性のある資料入手先・ポイント
身体障害者手帳の交付時の診断書市町村の福祉担当課。透析導入時に手帳を取った方は保管されていることがある
健康保険の給付記録(レセプト)協会けんぽ・健康保険組合・国民健康保険。受診月の記録が残っている場合がある
お薬手帳・糖尿病連携手帳ご自宅に残っていることが多い。日付と医療機関名が入る
健康診断の結果表勤務先の健診記録。血糖値の指摘があれば時期の裏づけになる
紹介状・診療情報提供書の写し転院時のもの。前医の名称と受診時期が書かれている
第三者証明当時を知る第三者による申立て。複数名分が求められる
その他母子健康手帳、生命保険の給付申請書類、勤務先の休職記録 など

これらをどう組み合わせて、どう説明するかで結果が変わります。1枚では足りなくても、複数を積み上げることで初診日が認められた例は多くあります。逆に、資料を持っていながら使い方が分からず諦めてしまう方も、同じくらいいらっしゃいます。

ご家族だけでもご相談いただけます

透析導入の直後は、ご本人が疲弊されていることがほとんどです。ご本人が来られなくても、ご家族だけでのご相談で構いません。お薬手帳や健診の記録をお持ちいただければ、初診日の見当をつけるところから一緒に整理します。

6. もう1つの関門:保険料の納付要件

初診日が特定できたら、次はその日を基準に保険料をきちんと納めていたかが見られます。

原則

初診日の前日において、初診日がある月の2か月前までの被保険者期間で、国民年金の保険料納付済期間(厚生年金保険の被保険者期間、共済組合の組合員期間を含む)と保険料免除期間をあわせた期間が3分の2以上あること。

特例(当面はこちらで判定されることが多い)

初診日が令和18年3月末日までにあるときは、次のすべてに該当すれば納付要件を満たすものとされます。

  • 初診日において65歳未満であること
  • 初診日の前日において、初診日がある月の2か月前までの直近1年間に保険料の未納期間がないこと

出典:日本年金機構「障害年金ガイド 令和8年度版」

ここで注意していただきたいのは、判定されるのは「初診日」時点の納付状況だということです。透析を始めた時点ではありません。初診日が20年前なら、20年前の時点で保険料を納めていたかが問われます。

この点はご本人の記憶と食い違うことがよくあります。「若い頃、国民年金を払っていなかった時期がある」という方でも、当時が学生で学生納付特例を受けていれば「免除期間」として扱われ、要件を満たすことがあります。思い込みで諦めず、年金記録を確認することが大切です。

なお、この「直近1年間に未納がなければよい」という特例は、もともと令和8年3月末までの時限措置でしたが、令和18年(2036年)3月末まで10年間延長されています。詳しくはこちらの記事で解説しています。

7. 何年も透析している方へ――遡及請求で最大5年分

「透析を始めて8年になるが、障害年金のことを今まで知らなかった」――このようなご相談は珍しくありません。今からでも間に合います。

障害認定日にさかのぼって請求することを遡及請求(認定日請求)といいます。認められれば、過去の分もまとめて受け取れます。ただし年金は5年で時効にかかるため、受け取れるのは請求時点から過去5年分までです。

図7
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遡及請求で受け取れる範囲と5年の時効 障害認定日から現在までが8年ある場合でも、時効により受け取れるのは請求日から遡って5年分まで。障害基礎年金2級で単純計算すると約424万円になる。5年より前の3年分は時効で消滅する。 透析歴8年の方が今から遡及請求した場合 時効で消滅(3年分) まとめて受け取れる(5年分) 847,300円 × 5年 = 約 424万円 障害認定日 (透析開始+3か月) 8年前 5年前 時効の境目 請求日(今) 以後は毎年受給 1年待つと、1年分(約85万円)が時効で消えます 遡及請求には「障害認定日当時の状態」を証明する診断書が必要です。 当時のカルテが残っているかが分かれ目になるため、時間が経つほど不利になります。
金額は令和8年度の障害基礎年金2級で単純計算したものです。実際には年度ごとに額が異なるため概算になります。遡及請求で重要なのは「当時の診断書が書けるかどうか」――カルテの保存期間は5年なので、迷っている時間が直接損失につながります。

遡及請求について詳しくは、障害年金の遡及請求とは?過去5年分を取り戻す方法で解説しています。

8. 腎移植を受けたらどうなるか

「移植を受けたら年金は止まるのか」というご質問をよくいただきます。すぐに止まることはありません。基準にはこう定められています。

(11) 腎臓移植の取扱い

ア 腎臓移植を受けたものに係る障害認定に当たっては、術後の症状、治療経過、検査成績及び予後等を十分に考慮して総合的に認定する。

イ 障害年金を支給されている者が腎臓移植を受けた場合は、臓器が生着し、安定的に機能するまでの間を考慮して術後1年間は従前の等級とする。

出典:障害認定基準 第12節 認定要領(11)

移植後1年間はそれまでの等級が維持されます。その後は、術後の状態を総合的に見て判断されます。移植後も免疫抑制剤の服用が続き、体調が安定しない方もいらっしゃいます。更新時に提出する診断書の内容が結果を左右するため、提出前の確認をおすすめしています。

更新の手続きについては、障害年金の更新(再認定)完全ガイドもあわせてご覧ください。

9. 申請の流れと必要書類

図8
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人工透析で障害年金を申請する流れ ステップ1は初診日の特定と年金記録の確認。ステップ2は受診状況等証明書の取得。ステップ3は診断書の依頼。ステップ4は病歴就労状況等申立書の作成。ステップ5は年金事務所への提出。決定までおおむね3から4か月かかる。 1 初診日の特定 年金記録の確認 納付要件の判定 2 受診状況等 証明書 初診の病院で取得 3 診断書 腎疾患・肝疾患・ 糖尿病の障害用 4 病歴・就労状況 等申立書 ご自身で作成 5 提出 年金事務所 または市町村 提出から結果が出るまで:おおむね3〜4か月 決定後、さらに1〜2か月ほどで初回の振り込みがあります(初回はまとめて数か月分)。 つまずくのは、ほぼステップ1と2です 診断書(ステップ3)は透析中であれば内容で争いになることは少なく、関門は初診日の証明にあります。
人工透析の診断書は「腎疾患・肝疾患・糖尿病の障害用(様式第120号の6-2)」を使います。透析中であることが記載されれば等級の判断は明快なので、力を注ぐべきはステップ1と2です。

診断書の依頼のコツについては、障害年金の診断書の書き方で詳しく解説しています。病歴・就労状況等申立書の書き方はこちらの記事をご覧ください。

10. よくあるご質問

Q1. 人工透析を受けていれば障害年金は必ずもらえますか?

A1. 障害の程度については、認定基準に「人工透析療法施行中のものは2級と認定する」と明記されており、原則として2級に該当します。ただし障害年金を受け取るには、障害の程度のほかに「初診日が特定できること」と「保険料の納付要件を満たしていること」の2つが必要です。透析を受けていても、初診日が特定できない、または納付要件を満たさない場合は受給できません。逆に言えば、この2つさえクリアできれば受給できる可能性が非常に高いのが人工透析です。

Q2. 人工透析だといくらもらえますか?

A2. 令和8年度の障害基礎年金2級は年額847,300円(昭和31年4月2日以後生まれの方)です。18歳到達年度末までのお子さんがいる場合は2人目まで1人につき243,800円、3人目から1人につき81,300円が加算されます。初診日に厚生年金に加入していた方は、これに障害厚生年金(報酬比例部分)が上乗せされ、65歳未満の配偶者がいる場合はさらに加給年金額243,800円が加算されます。報酬比例部分は在職中の給与によって変わりますが、加入期間が300月未満の場合は300月とみなして計算されます。

Q3. 透析を始めてから1年6か月待たないと申請できませんか?

A3. 待つ必要はありません。基準には「障害の程度を認定する時期は、人工透析療法を初めて受けた日から起算して3月を経過した日(初診日から起算して1年6月を超える場合を除く。)とする」と定められています。ただしこの特例が使えるのは、その日が初診日から1年6か月以内に来る場合です。初診日から1年6か月が過ぎてから透析を導入した方は「事後重症による請求」という別のルートになり、この場合は請求日の翌月分からの支給となります。どちらのルートになるかで受け取れる金額が大きく変わります。

Q4. 糖尿病から透析になりました。初診日はいつになりますか?

A4. 糖尿病性腎症の場合、初診日は透析を始めた日でも腎臓内科にかかった日でもなく、糖尿病で初めて医師の診察を受けた日まで遡るのが原則です。基準では糖尿病性腎症は糖尿病の慢性合併症として位置づけられ、その障害の程度は腎疾患の節で認定するとされているためです。健康診断で血糖値を指摘されて内科にかかったのが20年前であれば、その20年前が初診日になります。当時のカルテは法定保存期間の5年を過ぎて廃棄されていることが多く、初診日の証明が最大の関門になります。この場合は第三者証明や当時の記録など、代わりの資料を組み立てる必要があります。

Q5. 透析を始めて何年も経っていますが、今からでも請求できますか?

A5. 請求できます。障害認定日にさかのぼって請求することを遡及請求といい、認められれば過去の分もまとめて受け取れます。ただし年金は5年で時効にかかるため、受け取れるのは請求時点から過去5年分までです。障害基礎年金2級で単純計算すると5年分で約420万円になります。透析を10年続けている方でも、5年分は取り戻せる可能性があります。遡及請求には障害認定日当時の状態を証明する診断書が必要で、当時のカルテが残っているかどうかが分かれ目になります。1年でも早く動くほど、時効で消える分が少なくなります。

Q6. 働きながら透析を受けています。仕事をしていると受給できませんか?

A6. 働いていても受給できます。人工透析は「人工透析療法施行中のものは2級と認定する」と基準に明記されており、就労の有無で対象から外れるものではありません。精神の障害などとは異なり、就労状況が等級判定を大きく左右しにくいのが人工透析の特徴です。夜間透析や在宅透析を受けながらフルタイムで勤務されている方も受給されています。ただし20歳前に初診日がある障害基礎年金には所得制限があるため、この場合のみ所得によって支給停止となることがあります。

Q7. 腎移植を受けたら障害年金は止まりますか?

A7. すぐに止まることはありません。基準では「障害年金を支給されている者が腎臓移植を受けた場合は、臓器が生着し、安定的に機能するまでの間を考慮して術後1年間は従前の等級とする」と定められており、移植後1年間はそれまでの等級が維持されます。その後は術後の症状、治療経過、検査成績、予後などを十分考慮して総合的に認定されます。移植後の状態によっては引き続き支給されるケースもあります。更新の診断書の内容が結果を左右するため、提出前の確認をおすすめします。

Q8. 65歳を過ぎてから透析になりました。もう無理でしょうか?

A8. 諦めるのは早いかもしれません。年齢の制限がかかるのは「初診日」の時点です。初診日が65歳前にあり、その時点で納付要件を満たしていれば、透析導入が65歳を過ぎた後でも障害認定日による請求ができる場合があります。糖尿病性腎症のように初診日が何十年も前に遡るケースでは、まさにこれに当てはまります。「今の年齢」ではなく「初診日の年齢」で判断されることを覚えておいてください。ただし事後重症による請求は65歳に達する日の前日までに行う必要があるなど、ルートによって制限が異なります。

まとめ

人工透析は、数ある傷病の中でもっとも障害年金に結びつきやすいものの1つです。等級は基準に「2級と認定する」と書かれており、判定で悩む余地がありません。それにもかかわらず受給できていない方が多いのは、障害の程度ではなく「初診日」でつまずいているからです。

本記事のポイント:

  • 人工透析は原則2級:認定基準に明記。検査数値も一般状態区分も問われない
  • 合併症次第で1級も:長期透析による合併症があれば上位等級の可能性
  • 令和8年度は年847,300円:子の加算・配偶者加給・報酬比例が上乗せされる
  • 3か月ルール:透析開始から3か月経過した日が障害認定日(1年6か月以内に来る場合)
  • 初診日は透析開始日ではない:糖尿病性腎症なら糖尿病の初診まで遡る
  • カルテがなくても諦めない:手帳・レセプト・健診記録・第三者証明で組み立てられる
  • 働いていても受給できる:就労で対象から外れることはない
  • 遡及請求で最大5年分:ただし1年待てば1年分(約85万円)が時効で消える

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この記事の根拠資料

  • 日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」第12節 腎疾患による障害/第15節 代謝疾患による障害(令和4年4月1日改正)
  • 日本年金機構「障害年金ガイド 令和8年度版」
  • 厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」(令和8年1月23日)

本記事は令和8年(2026年)8月時点の制度に基づいています。個別の事案は状況により結論が異なりますので、詳しくはご相談ください。