傷病手当金と障害年金は両方もらえる?差額調整の仕組みと1年6か月の落とし穴を社労士が図解【2026年版】
「休職して傷病手当金をもらっているけれど、あと半年で終わると言われた」「傷病手当金と障害年金は、両方もらえるのか」「障害年金をもらうと傷病手当金が止まるのか」――会社員の方からのご相談で、いちばん多い質問のひとつです。
先に結論を書きます。傷病手当金と障害年金は、同時に受けることができます。ただし、同じ病気で障害厚生年金を受ける場合には、健康保険法に「調整」の決まりがあり、年金の額を360で割った日額と、傷病手当金の日額を比べて、差額だけが傷病手当金として支給される仕組みになっています。両方とも満額、ではありません。
もうひとつ、見落とされやすいのが「1年6か月」が2つあることです。傷病手当金の支給期間は「支給開始日から通算1年6か月」、障害年金の障害認定日は「初診日から1年6か月」。起点が違うので、終わる時期と始められる時期はぴったり重なりません。ここを知らずに「傷病手当金が終わってから障害年金を考えよう」と待っていると、審査期間の3か月程度も含めて収入が途切れる期間ができてしまいます。
この記事では、山口県長門市の社労士が、両方受けられる仕組み、差額調整の計算、2つの1年6か月の関係、いつ動き始めるべきか、さかのぼり受給の返納、退職する場合の注意までを図解8点で整理します。金額はすべて令和8年度(2026年度)の額で試算しています。傷病手当金と障害年金は担当する法律も窓口も違うため、両方をまとめて扱える社労士でないと全体像が見えにくい分野です。
「傷病手当金の残りが何か月で、いつから障害年金の準備を始めればいいか」は、お電話で見当がつきます
初回相談無料・今すぐ電話080-6178-9367
平日 9:00〜18:00(土日祝も対応可能)/休職中の方はご自宅からのお電話で結構です
1. 傷病手当金と障害年金は「別の制度」――だから両方受けられる
まず、この2つがまったく別の制度だということを押さえてください。傷病手当金は健康保険の給付で、窓口は協会けんぽや健康保険組合です。障害年金は国民年金・厚生年金の給付で、窓口は年金事務所です。根拠になる法律も、審査する機関も、申請書も違います。
だから「片方をもらっていると、もう片方は申請できない」ということはありません。傷病手当金を受けている最中でも、障害年金の請求はできますし、障害年金を受けていても、傷病手当金の申請はできます。
← 横にスクロールできます →
1-1. ただし「両方とも満額」ではありません
両方受けられる、と聞くと「合計でかなりの額になる」と思われるかもしれませんが、そうではありません。健康保険法第108条に、同じ病気で障害厚生年金を受けるときは、傷病手当金の側を調整するという決まりがあります。中身は第3章で計算しますが、先に結論だけ言うと、1日あたりで受け取る合計は、傷病手当金の日額までで頭打ちになります。
それでも障害年金を請求する意味は大きい。理由は図1の「期間」の行にあります。傷病手当金は通算1年6か月で必ず終わりますが、障害年金は障害の状態が続く限り終わりません。傷病手当金が終わったあとの収入を支えるのは障害年金です。だからこそ、傷病手当金が終わる前に、障害年金への切り替えを準備しておく必要があります。
この記事でいちばん伝えたいこと
傷病手当金は「終わりが決まっている」給付です。終わってから障害年金を考え始めると、審査の3か月程度と準備の1〜2か月が、そのまま収入ゼロの期間になります。傷病手当金の残りが6か月を切ったら、障害年金の準備を始める。これが本記事の結論です。
2. 「1年6か月」が2つある――起点が違うので終わる時期は重ならない
傷病手当金にも障害年金にも「1年6か月」という期間が出てきます。同じ長さなので「傷病手当金が終わる日=障害年金を請求できる日」と思われがちですが、起点が違います。
| 制度 | 1年6か月の起点 | 意味 |
|---|---|---|
| 傷病手当金 | 支給を開始した日(休み始めて待期3日が終わった翌日) | ここから通算1年6か月で支給が終わる |
| 障害年金 | 初診日(その病気で初めて医師にかかった日) | ここから1年6か月後が障害認定日=請求できるようになる日 |
初診日にすぐ休職した方なら、2つの1年6か月はほぼ同時に終わります。しかし、初診日のあとも何か月か働いてから休職した方は、傷病手当金の終わりが障害認定日より後ろにずれます。その間は、両方を受けられる「重複期間」になります。
← 横にスクロールできます →
2-1. 令和4年の改正で、傷病手当金は「通算」になりました
傷病手当金の1年6か月は、以前は「支給開始日から暦で1年6か月」でしたが、令和4年1月から「通算して1年6か月」に変わっています。途中で復職して傷病手当金を受けなかった期間があれば、そのぶん終わりが後ろにずれます。つまり、復職と再休職をくり返した方ほど、図2のパターンBの「重複期間」が長くなります。
傷病手当金の支給期間は、支給を開始した日から通算して1年6か月です。
出典:全国健康保険協会(協会けんぽ)「傷病手当金」(給付と手続き)
一方、障害年金の側は初診日が起点です。初診日がいつなのかは、傷病手当金の支給開始日とは関係なく、カルテや受診状況等証明書で確定します。初診日の考え方は障害年金の初診日とは?証明方法と初診日不明の対処法で詳しく解説しています。
3. 両方受けるときの計算――「÷360」の差額ルール
ここが本記事の中心です。同じ病気で障害厚生年金を受けることになったとき、傷病手当金がどう調整されるのかを、健康保険法第108条第3項の決まりに沿って整理します。
【要旨】傷病手当金を受けるべき人が、同一の疾病又は負傷について厚生年金保険法による障害厚生年金を受けることができるときは、傷病手当金は支給しない。ただし、その障害厚生年金の額(同じ支給事由で障害基礎年金も受けられるときは両方の合算額)を360で割った額が傷病手当金の日額より少ないときは、その差額を支給する。
出典:健康保険法第108条第3項、健康保険法施行規則(年金額を360で除して日額とする規定)。条文の言い回しを平易に直しています。
ポイントは3つです。
- 「同じ病気」であること。傷病手当金の原因になった病気と、障害厚生年金の原因になった病気が同じ(またはそれによって生じた病気)である場合に調整されます。別の病気なら調整はありません。
- 年金は年額を360で割って日額にする。365ではなく360です。障害基礎年金も一緒に受けるときは、合算してから割ります。
- 調整されるのは傷病手当金の側。障害年金の額は減りません。年金の日額が傷病手当金の日額以上なら傷病手当金はゼロ、少なければ差額が傷病手当金として支給されます。
3-1. 具体的な数字で見てみましょう
標準報酬月額30万円の会社員の方を例にします。
傷病手当金の日額:300,000円 ÷ 30 = 10,000円 → 10,000円 × 2/3 = 6,667円(1円未満四捨五入)
障害厚生年金2級の年額(障害基礎年金2級 847,300円 + 報酬比例部分 493,290円※)= 1,340,590円
年金の日額:1,340,590円 ÷ 360 = 約3,724円
差額:6,667円 − 3,724円 = 約2,943円 → この分が傷病手当金として支給される
※ 報酬比例部分は「平均標準報酬額 × 5.481/1000 × 被保険者期間の月数(300月未満は300月として計算)」で、300,000円 × 5.481/1000 × 300月 = 493,290円としています。配偶者加給年金・子の加算は含めていません。端数処理は省略しています。
← 横にスクロールできます →
3-2. 「それなら障害年金を請求する意味がない」ではありません
合計が頭打ちなら、傷病手当金をもらっている間は障害年金を請求しても意味がないのでは、と思われるかもしれません。しかし、意味は大いにあります。
- 傷病手当金は終わるが、障害年金は終わらない。図2のとおり、傷病手当金が終わった翌日から収入を支えるのは障害年金だけです。
- 障害年金の審査には3か月程度かかる。日本年金機構の案内では、請求書の提出から決定まで3か月程度とされています。傷病手当金が終わる前に請求しておかないと、その3か月が収入の空白になります。
- 障害認定日にさかのぼって受けられる。障害認定日の時点で障害の状態にあれば、請求が遅れても認定日の翌月分から支給されます(時効は5年)。詳しくは障害年金の遡及請求とは?過去5年分を取り戻す方法をご覧ください。
傷病手当金と障害年金は「どちらか」ではなく、「傷病手当金から障害年金へバトンを渡す」関係です。バトンを落とさないためには、傷病手当金が終わる前に障害年金の請求を済ませておく必要があります。
4. 等級で差額はこう変わる――令和8年度の金額で試算
差額がいくらになるかは、障害年金の等級と、報酬比例部分の額で変わります。同じ標準報酬月額30万円・単身・厚生年金の加入期間は300月みなし、という前提で、3級・2級・1級を並べてみます。
← 横にスクロールできます →
この表から読み取っていただきたいのは、「傷病手当金がある間の差額」より「終わったあとの月額」のほうが大事だということです。傷病手当金の月額(およそ20万円)に比べると、障害年金だけになったときの落差は大きい。だからこそ、実態に見合った等級で認定を受けることが重要になります。等級の決まり方は障害年金の金額はいくら?等級別の受給額と障害厚生年金と障害基礎年金の違いで解説しています。
3級は「働きながら」が前提の等級です
障害厚生年金3級は、認定基準で「労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度」とされる等級です。傷病手当金が終わったあと3級だけで生活するのは現実には難しく、多くの方は短時間勤務や配慮のある職場で働きながら3級を受ける形になります。働きながら受ける場合の注意は働きながら障害年金を受給できる!をご覧ください。
「自分の場合、差額はいくらで、終わったあとはいくらになるのか」――標準報酬月額と初診日がわかれば、お電話で概算をお伝えできます
初回相談無料・今すぐ電話080-6178-9367
平日 9:00〜18:00(土日祝も対応可能)/ご家族からのお電話でも結構です
5. 傷病手当金が終わる前に動く――いつ・何を始めるか
ここまでの話をまとめると、やるべきことは「傷病手当金が終わる日に、障害年金の初回振込が間に合うように逆算する」ことです。日本年金機構の案内では、障害年金は請求書の提出から決定まで3か月程度とされています。その前に、初診日の証明、診断書、病歴・就労状況等申立書をそろえる期間が必要です。
← 横にスクロールできます →
5-1. 障害認定日がまだ来ていない場合
図2のパターンAのように、初診日にすぐ休職した方は、傷病手当金の終わりと障害認定日がほぼ同時です。この場合、障害認定日が来るまで診断書は書けません(診断書は障害認定日以後3か月以内の状態で作成します)。しかし、それ以外の準備――初診日の証明、納付要件の確認、申立書の下書き――は認定日の前から進められます。認定日が来たらすぐ診断書を依頼できる状態にしておくのが理想です。
5-2. 傷病手当金の残りがわからない方へ
「通算」になったことで、自分の傷病手当金があと何日残っているのか、ご本人にもわかりにくくなっています。協会けんぽや健康保険組合に問い合わせれば、これまでの支給日数と残りを教えてもらえます。残り日数を確認することが、障害年金の準備の出発点です。
申請書類の全体像は障害年金の申請方法完全ガイド、申立書の書き方は病歴・就労状況等申立書の書き方、診断書の依頼のしかたは障害年金の診断書の書き方で詳しく解説しています。
6. さかのぼって障害年金を受けたときの「返納」
障害年金は、請求が遅れても、障害認定日の時点で障害の状態にあれば認定日の翌月分にさかのぼって支給されます。すると、すでに傷病手当金を受け取った期間と、障害年金が支給される期間が重なることがあります。この重複期間について、本来なら調整されていたはずの傷病手当金を返納する必要が出てきます。
傷病手当金と障害年金を両方受けた場合、既に支払われた傷病手当金をご返金いただく場合があります。障害年金をさかのぼって受給され、傷病手当金の期間と重複した場合は、協会けんぽまでご連絡ください。
出典:全国健康保険協会 愛媛支部「傷病手当金を受けている方へ」(傷病手当金と年金の調整に関する案内)
← 横にスクロールできます →
返納と聞くと損をするように感じますが、そうではありません。重複期間について本来受け取るべき合計額は「傷病手当金の日額まで」で、それは返納後も変わりません。さかのぼりの一時金には、傷病手当金の終了後の分(重複していない期間)が丸ごと含まれますから、手元に残る額は請求しなかった場合より確実に増えます。ただし、一時金を使い切ってから返納を求められると困りますので、重複期間の返納分は最初から分けておくことをおすすめしています。
なお、障害年金を受けることになったら、傷病手当金の支給申請書にある年金の受給欄に正しく記載してください。隠して受け続けると、あとでまとめて返納を求められます。
7. 退職が近い方へ――継続給付の2つの条件と老齢年金の調整
休職期間の上限が来て退職を考えている方も多いと思います。退職しても、条件を満たせば傷病手当金は残りの期間を受け続けられます(資格喪失後の継続給付)。条件は2つです。
次の2点を満たしている場合に退職後も引き続き残りの期間について傷病手当金を受けることができます。
・被保険者の資格喪失をした日の前日までに継続して1年以上の被保険者期間があること
・資格喪失時に傷病手当金を受けているか、受ける条件を満たしていること出典:全国健康保険協会(協会けんぽ)「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」よくあるご質問
← 横にスクロールできます →
7-1. 退職日に「最後の挨拶」で出勤しない
条件②は、退職日に傷病手当金を「受けているか、受けられる状態」であることです。退職日に出勤して仕事をすると、その日は「働けない状態」でなくなり、条件②を満たさないと判断されるおそれがあります。私物の引き取りや挨拶回りで退職日に出勤するのは避けてください。書類のやり取りは郵送で済ませるのが安全です。
7-2. 退職後に老齢年金を受けると、傷病手当金は調整されます
退職後の継続給付を受けている方が老齢厚生年金などの老齢年金を受けるようになると、障害年金と同じ「÷360の差額ルール」で傷病手当金が調整されます(健康保険法第108条第5項)。60歳以降で退職を考えている方は、老齢年金の繰上げ受給を検討する前に、この調整を確認してください。
7-3. 障害厚生年金は、退職しても「初診日基準」
「退職したら障害厚生年金はもらえなくなる」と心配される方がいますが、そうではありません。障害厚生年金の対象になるかどうかは、初診日に厚生年金に加入していたかで決まります。在職中に初診日があれば、退職して国民年金に切り替わったあとに請求しても、障害厚生年金(3級あり)の対象です。逆に言えば、初診日が退職後だと障害基礎年金(1級・2級のみ)しか対象になりません。初診日を確定させておくことが、退職前にやっておくべき最重要事項です。
8. 調整がないケース・別の調整があるケース
第3章の差額ルールは「同じ病気で障害厚生年金を受けるとき」の話でした。当てはまらないケースを整理しておきます。
| ケース | 傷病手当金との関係 |
|---|---|
| 障害基礎年金だけを受ける(初診日が国民年金の期間) | 調整なし。健康保険法第108条第3項が調整の対象にしているのは障害厚生年金です。障害基礎年金だけの方は、傷病手当金を満額受けながら障害基礎年金も受けられます。ただし傷病手当金は健康保険の加入者(会社員など)の給付なので、初診日が国民年金の期間で、その後に就職して健康保険に入った方などが該当します。 |
| 別の病気で障害厚生年金を受ける | 調整なし。調整は「同一の疾病又は負傷(およびそれによって生じた病気)」の場合に限られます。 |
| 障害手当金(一時金)を受ける | 別の調整。傷病手当金の合計額が障害手当金の額に達するまで、傷病手当金は支給されません(健康保険法第108条第4項)。 |
| 労災の休業補償給付を受ける | 業務上・通勤途中の病気やケガは労災の対象で、傷病手当金の対象外です。障害年金と労災の障害補償年金は併給されますが、障害年金の側が一部減額されます(本記事では扱いません)。 |
| 失業給付(雇用保険の基本手当) | 傷病手当金とは同時に受けられません(失業給付は働ける状態が前提)。障害年金とは調整がなく、両方受けられます。 |
「同じ病気」かどうかは、ご自身で判断しないでください
たとえば「うつ病で傷病手当金を受け、その後に双極性障害と診断されて障害年金を請求した」場合、病名は違っても同一の傷病として扱われるのが通常です。逆に、まったく別の原因の病気なら調整はありません。どちらに当たるかは健康保険の側が判断しますので、迷ったらご相談ください。
9. あなたはどのパターン?――今すぐやることの判断図
最後に、いまの状況から「次に何をするか」をたどれる判断図を置きます。
← 横にスクロールできます →
ご自身がどのパターンかわからない方、初診日があいまいな方、傷病手当金の残りがわからない方は、それを確認するところからお手伝いします。長門市・萩市・美祢市の方は、長門市で障害年金の相談ならどこへ?もあわせてご覧ください。
「傷病手当金の残りが6か月を切った」――そのタイミングでお電話いただければ、空白を作らずに切り替えられる可能性が高くなります
初回相談無料・今すぐ電話080-6178-9367
平日 9:00〜18:00(土日祝も対応可能)/休職中で外出がつらい方は電話・オンラインで対応します
10. よくあるご質問
Q1. 傷病手当金をもらっている間は、障害年金を請求できないのですか?
請求できます。傷病手当金は健康保険、障害年金は年金制度で、別々の制度です。障害年金は原則として初診日から1年6か月を過ぎた日(障害認定日)以降に請求でき、傷病手当金を受けているかどうかは請求の条件に関係ありません。ただし同じ病気で障害厚生年金を受けることになると、健康保険法第108条により傷病手当金の側が調整されます。障害年金を受けられなくなるのではなく、傷病手当金が調整される、という向きです。
Q2. 両方もらうと、傷病手当金は打ち切られるのですか?
場合によります。同じ病気で障害厚生年金を受けるとき、障害厚生年金の年額(同じ理由で障害基礎年金も受けるときはその合計額)を360で割った日額が、傷病手当金の日額以上であれば傷病手当金は支給されません。年金の日額のほうが少なければ、その差額が傷病手当金として支給されます。傷病手当金は給与のおよそ3分の2なので、多くの会社員の方では傷病手当金の日額のほうが高く、差額が支給される形になります。なお初診日に国民年金だけで障害基礎年金のみを受ける場合は、この調整はありません。
Q3. 障害年金を請求すると、会社に知られますか?
障害年金の請求は年金事務所に対して行うもので、会社を通す手続きではありません。ただし、傷病手当金の支給申請書には障害年金や障害手当金を受けているかどうかを書く欄があり、受給が決まったら正しく記載する必要があります。会社経由で申請書を出している場合は、その欄を通じて会社が知ることになります。隠して傷病手当金を受け続けると、あとで返納を求められますので、正直に記載してください。
Q4. 傷病手当金の1年6か月が終わってから、障害年金を考えればいいですか?
それでは遅くなりがちです。障害年金は請求してから決定まで、日本年金機構の案内で3か月程度かかります。さらに請求の前に初診日の証明、診断書の作成依頼、病歴・就労状況等申立書の作成が必要で、ここに1〜2か月かかることも珍しくありません。傷病手当金が終わってから動き始めると、収入が途切れる期間が半年近くになることがあります。傷病手当金の残り期間が6か月を切ったら、障害年金の準備を始めることをおすすめします。
Q5. うつ病で休職して傷病手当金をもらっています。障害年金の対象になりますか?
うつ病などの精神疾患も障害年金の対象です。傷病手当金を受けている方のご相談で、実際にいちばん多いのが精神疾患です。日常生活や仕事への影響の程度によって等級が判断されます。会社員として厚生年金に加入している間に初めて受診していれば障害厚生年金の対象になり、3級(労働に制限がある程度)でも支給されます。うつ病の認定基準や申請のポイントはうつ病で障害年金は受給できる?で詳しく解説しています。
Q6. さかのぼって障害年金をもらえたら、傷病手当金は全額返さないといけませんか?
全額とは限りません。返すのは、障害年金を受けられることになった期間と傷病手当金を受けた期間が重なった部分について、本来なら調整されていたはずの額です。年金の日額のほうが傷病手当金の日額より少ない場合は、差額を超えて受け取った部分だけが返納の対象になります。協会けんぽの案内でも、障害年金をさかのぼって受給し傷病手当金の期間と重複した場合は連絡するよう求めています。さかのぼりの一時金を受け取ったら、返納分を確保しておくことが大切です。
Q7. 退職したら傷病手当金は終わりですか?
2つの条件を満たせば、退職後も残りの期間について傷病手当金を受け続けることができます。退職日の前日までに継続して1年以上の健康保険の被保険者期間があること、そして退職日に傷病手当金を受けているか受けられる状態にあることです。退職日に出勤して挨拶回りをすると受けられる状態でなくなり、継続給付が受けられなくなることがあるので注意が必要です。また、障害厚生年金は初診日に厚生年金に加入していたかで決まるので、退職後に請求しても障害厚生年金の対象です。
Q8. 失業給付(雇用保険の基本手当)との関係はどうなりますか?
傷病手当金と失業給付は同時には受けられません。失業給付は働ける状態にあることが前提で、傷病手当金は働けない状態が前提だからです。働けないうちは傷病手当金を受け、失業給付は受給期間の延長を申請しておくのが一般的です。一方、障害年金と失業給付には併給の調整はなく、両方受けることができます。ただし障害年金の請求では働ける状態かどうかが審査に影響しますので、失業給付を受けながら障害年金を請求する場合は状況を正確に伝えることが大切です。
まとめ
傷病手当金と障害年金は、どちらかを選ぶものではなく、傷病手当金から障害年金へバトンを渡す関係です。同じ病気で障害厚生年金を受けると、傷病手当金は「年金の日額(÷360)との差額」に調整されますが、年金の側は減りません。そして傷病手当金は通算1年6か月で必ず終わり、障害年金は障害の状態が続く限り終わりません。だからこそ、傷病手当金の残りが6か月を切ったら障害年金の準備を始める。これが本記事の結論です。
本記事のポイント:
- 両方受けられる:健康保険と年金は別制度。片方が理由でもう片方を請求できないことはない
- ÷360の差額ルール:同じ病気で障害厚生年金を受けるとき、年金の年額÷360が傷病手当金の日額より少ない分だけ傷病手当金が出る。年金は減らない
- 1年6か月が2つある:傷病手当金は「支給開始日から通算」、障害年金は「初診日から」。起点が違うので終わりと始まりは重ならない
- 審査は3か月程度:傷病手当金が終わってから請求すると、その3か月と準備期間が収入の空白になる
- 残り6か月で着手:初診日の証明→納付要件の確認→申立書→診断書→請求の順で逆算する
- さかのぼり受給の返納:重複期間の傷病手当金のうち差額を超えた分を健康保険の側に返す。一時金から分けておく
- 退職後の継続給付:継続1年以上の加入と、退職日に受けられる状態、の2条件。退職日に出勤しない
- 障害厚生年金は初診日基準:退職後に請求しても、初診日が在職中なら3級のある障害厚生年金の対象
無料相談のご案内
「傷病手当金の残りがあと何か月か」「自分の初診日はいつになるのか」「差額はいくらで、終わったあとはいくらになるのか」「退職前に何をしておくべきか」――そんな疑問は、初回相談無料でお気軽にご相談ください。
長門市・萩市・美祢市を中心に、自身も障害年金受給者である社労士が対応します。傷病手当金(健康保険)と障害年金(年金)の両方を扱えるのが社労士の強みです。休職中で外出がつらい方は、電話やオンラインでのご相談も可能です。ご家族だけのご相談も承ります。
メールでのお問い合わせはこちらこの記事の根拠資料
- 健康保険法 第99条(傷病手当金)、第108条 第3項〜第5項(障害厚生年金・障害手当金・老齢退職年金給付との調整)
- 健康保険法施行規則(年金額を360で除して日額とする規定)
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)「傷病手当金」(給付と手続き)/「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」よくあるご質問
- 全国健康保険協会 愛媛支部「傷病手当金を受けている方へ」(年金との調整・返納の案内)
- 厚生労働省 平成7年7月27日 庁保険発第22号・保険発第113号「傷病手当金と障害厚生年金との併給調整について」
- 日本年金機構「障害年金ガイド 令和8年度版」(年金額、請求から決定までの期間)
- 日本年金機構「令和8年4月分からの年金額等について」
本記事は令和8年(2026年)9月時点の制度に基づいています。年金額は令和8年度の額です。試算はいずれも端数処理を省略した概算で、実際の支給額は個別に計算されます。傷病手当金の調整の可否(同一の傷病かどうか等)は保険者が、障害年金の等級は日本年金機構が個別に判断しますので、本記事の記載は目安としてご覧ください。
田村社会保険労務士事務所
〒759-4102 山口県長門市西深川2038-2
080-6178-9367 tamura-sr@nagato-sr.com
平日 9:00〜18:00(土日祝も対応可能)
対応エリア:長門市・萩市・美祢市を中心に対応しています
初回相談無料/ご家族のみでのご相談も承ります