がん(悪性新生物)で障害年金は受給できる?対象になる3つのケースを社労士が解説【2026年版】

がんでも障害年金はもらえます

「治療で働けない」「後遺症が残った」――そんな時に受け取れる公的年金を、社労士が徹底解説

「障害年金って、精神疾患や事故のケガの人がもらうものでしょ?がんは対象なの?」――そう思っている方が非常に多いのが実情です。しかしがん(悪性新生物)は明確に障害年金の対象疾患であり、実際に多くの方が受給しています。

治療中の副作用で働けない、術後の後遺症で日常生活が制限される、全身衰弱で外出が困難――こうした状態のときに、生活を支える柱になるのが障害年金です。

この記事では、山口県長門市の社労士が、がんで障害年金がもらえる3つのケース、診断書の様式、等級の目安、初診日の考え方、乳がん・肺がん・大腸がん・血液がんの実例までを、この記事1本で分かるように徹底解説します。

1. がんで障害年金がもらえる3つのケース

がんによる障害年金の申請は、大きく分けて3つのパターンがあります。どのパターンに当てはまるかで、使う診断書の様式や、書いてもらうべき内容が変わってきます。

パターン①

全身衰弱・悪液質

がんの進行により全身状態が悪化しているケース

  • 著しい体重減少
  • 強い倦怠感で外出困難
  • 食欲不振・低栄養
  • 易感染性(免疫低下)
  • 寝たきりに近い状態
パターン②

抗がん剤・放射線の副作用

治療そのものによる副作用で就労困難なケース

  • 骨髄抑制(貧血・白血球減少)
  • 末梢神経障害(手足のしびれ)
  • 強い悪心・嘔吐
  • 放射線宿酔・皮膚障害
  • 治療のため頻回通院が必要
パターン③

手術後の後遺症

治療は一段落したが後遺症で生活・仕事に支障

  • 人工肛門造設(大腸がん)
  • 喉頭全摘出(喉頭がん)
  • 咽頭・食道再建術後
  • リンパ浮腫(乳がん術後等)
  • 胃・腸切除後の消化吸収障害

ポイント:複数パターンの合わせ技も可能

「大腸がんで人工肛門になり(パターン③)、その後の抗がん剤で強い倦怠感がある(パターン②)」というように、複数のパターンが重なっているケースは珍しくありません。合わせて診断書に記載してもらうことで、より上位の等級認定を目指せます

2. がんの等級認定基準(1級・2級・3級)

がんの障害年金は、日常生活または労働にどれだけ支障があるかで等級が決まります。以下が実務での目安です。

等級 状態の目安 典型例
1級 常時他人の介助が必要/ほぼ寝たきり 末期状態、意識障害を伴う、身の回りのこと全般に介助必要
2級 日常生活に著しい制限、就労は困難 抗がん剤の副作用で外出困難、全身衰弱で自宅療養中心、人工肛門+合併症
3級 労働に著しい制限(会社員のみ) 人工肛門造設のみ、治療中の一時的な就労困難、術後の軽度後遺症

ポイント:3級は「障害厚生年金」のみ

3級は会社員時代(厚生年金加入中)に初診日がある方のみが対象です。自営業・専業主婦・学生(国民年金加入中)の方は3級では受給できず、2級以上を目指す必要があります。詳しくは障害厚生年金と障害基礎年金の違いをご覧ください。

認定に使われる評価指標

がんの障害年金では、以下のような指標が総合的に評価されます。

  • 一般状態区分表:ア(軽度)〜オ(重度)の5段階評価。「ウ」以上で2級の可能性、「エ」で2級認定されやすい
  • PS(パフォーマンスステータス):0〜4の5段階。3以上で2級の可能性
  • 体重減少:発症前の体重から10%以上減少していると考慮される
  • 血液検査:ヘモグロビン・白血球・血小板の低下
  • 就労状況・通院頻度:休職中か、勤務日数、外来頻度

3. 診断書の様式と書いてもらうときのコツ

がんの障害年金では、症状の主体がどこにあるかで診断書の様式が変わります。

がんの障害年金で使う診断書様式

  • その他の障害用(様式第120号の7):もっとも一般的。全身衰弱・悪液質・抗がん剤の副作用など、複数の障害が重なる場合はこれ
  • 呼吸器疾患の障害用(様式第120号の5):肺がんで呼吸機能低下・在宅酸素療法が主体の場合
  • 循環器疾患の障害用(様式第120号の6-①):がんが心臓に転移・心不全を合併している場合
  • 血液・造血器の障害用:白血病・悪性リンパ腫など血液がんの場合
  • 肝疾患の障害用(様式第120号の6-②):肝臓がんや肝機能低下が主体の場合

診断書の様式選びで結果が変わることがあります

例えば肺がんで「その他の障害用」のみを使うと呼吸機能の詳細が記載されず、実際の状態より軽く見えてしまうことがあります。症状に合った様式を選ぶ、または複数の様式を組み合わせることが認定結果を左右します。判断に迷う場合は必ず社労士に相談してください。

診断書に書いてもらうべき5つのポイント

  1. 治療内容と時期:手術日、抗がん剤の種類とレジメン、放射線治療の部位と量
  2. 副作用の具体的な内容:「倦怠感がある」だけでなく「1日の大半を臥床で過ごす」など生活実態
  3. 就労状況:休職中/短時間勤務/通院日数/同僚のサポート状況
  4. 日常生活の制限:買い物・炊事・入浴などにどれだけ支障があるか(申立書とも整合)
  5. 数値データ:ヘモグロビン値、体重推移、腫瘍マーカー、画像所見の要旨

障害年金の診断書の書き方病歴・就労状況等申立書の書き方も併せてお読みください。

4. がんの「初診日」はいつになる?

がんの障害年金申請でもっとも判断が難しいのが「初診日」です。初診日で対象年金(基礎か厚生か)と保険料納付要件が決まるため、この特定が命綱になります。

がんの初診日を判定する3ステップ

1

症状で医師にかかったのが最初か?

しこり・出血・体重減少・持続する痛みなどの自覚症状で最初に医師の診察を受けた日が原則の初診日。

2

健康診断・がん検診で発見されたか?

検診で異常を指摘された場合は、(1)検診の受診日、または(2)検診結果を持って別医療機関を受診した日のいずれかが認められる。健診結果通知書を必ず保管。

3

その日の年金加入状況を確認

その日に厚生年金加入中なら障害厚生年金(3級もあり)、国民年金加入中なら障害基礎年金(2級以上)が対象になる。

がんの初診日で特に注意すべきこと

がんは「発見された日」と「症状が出た日」がズレることが多い病気です。無症状で人間ドックで見つかったケース、風邪だと思って受診したら実は肺がんだったケース、健診で異常を指摘され放置していたケース――どのタイミングを初診日とするかで、対象年金と受給額が大きく変わります。障害年金の初診日とは?証明方法もあわせてご確認ください。

5. 実例で見るがん別・受給ケース

実際にどのような状況で受給しているのか、代表的な4ケースをご紹介します(個人情報保護のため、複数事例を参考にした典型例として構成)。

ケース① 乳がん 障害厚生年金3級

43歳女性・会社員:乳がん術後リンパ浮腫と抗がん剤で就労困難

状況:右乳房全摘+腋窩リンパ節郭清後、右腕にリンパ浮腫が発生。抗がん剤治療中で強い倦怠感と手足のしびれ。フルタイム勤務が困難になり、短時間勤務に変更。

初診日:会社員として厚生年金加入中に、しこりを自覚して乳腺外科を受診した日

診断書様式:その他の障害用(第120号の7)+ 治療内容の詳細記載

📊 年額 約61万円(障害厚生年金3級・最低保証額)
ケース② 肺がん 障害基礎年金2級

62歳男性・自営業:肺がんで在宅酸素療法・全身衰弱

状況:非小細胞肺がん進行期。手術は適応外で化学療法中。呼吸苦強く在宅酸素療法(1日16時間以上)。体重は発症前から15kg減少、外出は病院受診のみ。

初診日:長引く咳と血痰で近医を受診した日(国民年金加入中)

診断書様式:呼吸器疾患の障害用(第120号の5)

📊 年額 約81万6千円(障害基礎年金2級)
ケース③ 大腸がん 障害厚生年金3級

51歳男性・会社員:大腸がんで人工肛門を造設

状況:下部直腸がんで直腸切断術+人工肛門造設。造設後6か月以上経過。装具の管理と交換が必要で、長時間の外出や出張に制約。復職はしたが業務内容を変更。

初診日:便に血が混じることで消化器内科を受診した日(厚生年金加入中)

診断書様式:その他の障害用(第120号の7)

📊 年額 約61万円〜(障害厚生年金3級・報酬比例で加算)
ケース④ 急性白血病 障害厚生年金2級

38歳女性・会社員:急性骨髄性白血病で骨髄移植後

状況:急性骨髄性白血病で寛解導入療法、地固め療法を経て骨髄移植。移植後の免疫抑制療法中で易感染性、GVHDによる皮膚障害、強い倦怠感。長期休職中。

初診日:発熱と全身倦怠感で内科を受診した日(厚生年金加入中)

診断書様式:血液・造血器の障害用

📊 年額 約140万円(障害基礎年金2級 81.6万円 + 障害厚生年金2級 報酬比例約60万円)

会社員(厚生年金)の受給額が大きくなる理由

会社員で2級認定されると、障害基礎年金と障害厚生年金の両方が支給されます。ケース④のように「2階建て」で受給できるため、自営業や専業主婦のケース②より受給額が大きくなります。詳しくは障害厚生年金と障害基礎年金の違いをご参照ください。

6. 申請の流れ(治療中でもOK)

「治療で忙しくて申請どころじゃない」と諦めている方も多いのですが、治療中こそ受給できる時期です。以下の流れで進めましょう。

初診日を確認する

年金手帳・国民年金加入記録・健診結果通知書・受診歴を確認。「いつ、どこで、何科で、症状は何だったか」を整理する。

年金事務所で受給資格を確認する

初診日を伝えて「保険料納付要件」を満たしているかを確認。詳しくは障害年金の申請方法完全ガイド参照。

受診状況等証明書を取得する

初診の医療機関で「受診状況等証明書」を書いてもらう。転院している場合はこの書類が特に重要。

診断書を主治医に依頼する

認定日から3か月以内の状態を記載してもらう。上記セクション3の5つのポイントを事前に伝えるとスムーズ。

病歴・就労状況等申立書を作成する

自分または家族が作成。診断書と整合するよう、生活実態を具体的に書く。書き方の7つのコツを参照。

年金事務所に提出

書類一式を提出。決定通知まで通常3〜4か月。認定されれば認定日の翌月分から遡って支給される。

ポイント:早めの申請が金銭的にも精神的にも重要

障害年金は申請月の翌月分から支給されるため、迷って先延ばしにするだけ金額が減ります。「治療が落ち着いたら」ではなく、症状が重い今こそ申請時期です。ご家族や社労士のサポートを活用してください。

7. よくある失敗・注意点

① 「治ってから申請しよう」と待ってしまう

がん治療は数年に及ぶことも多く、寛解後は等級が下がる可能性が高くなります。治療中の重い時期こそ受給できる期間で、その分を逃すと数百万円単位の差になることも。

② 「症状が軽く見える診断書」で提出してしまう

患者は診察時、頑張って元気に振る舞う傾向があります。その姿を見た医師は「元気ですね」と診断書に書いてしまう。診断書は「一番調子が悪い日の状態」で書いてもらうことが重要です。

③ 診断書の様式選びを間違える

肺がんで呼吸苦が主症状なのに「その他の障害用」だけで提出、血液がんなのに「その他の障害用」だけで提出――症状に合わない様式は認定率を下げます。

④ 初診日を軽く扱う

「がん告知の日」を初診日と勘違いする方が多いのですが、正しくは症状で最初に医師にかかった日です。ここを間違えると、対象年金や保険料納付要件で不利になります。

⑤ 申立書と診断書の内容が食い違う

診断書に「独歩可能」と書かれているのに、申立書に「歩行困難」と書くと矛盾で審査が不利に。両者の整合性を意識して作成しましょう。障害年金申請のあるある失敗5選も要チェック。

不安な方は最初から社労士にご相談ください

がんの障害年金は、診断書の様式選び、初診日の判定、症状の記述など専門的な判断が多く関わります。不支給になってから再申請するよりも、最初から準備した方が認定率が高く、精神的負担も少ないことが多いです。不支給になった場合の対処法自分でやる?社労士に頼む?もご参照ください。

8. よくある質問(FAQ)

Q1. がんで障害年金は本当にもらえますか?

A1. 受給できます。がん(悪性新生物)は障害年金の対象疾患で、(1)全身衰弱・悪液質、(2)抗がん剤・放射線治療の副作用、(3)手術後の後遺症(人工肛門・喉頭摘出等)のいずれかで日常生活または労働に著しい支障がある場合に、1級〜3級の認定を受けられます。治療中でも申請可能で、寛解後も後遺症が残っていれば継続受給できます。

Q2. がんの障害年金の診断書はどの様式ですか?

A2. 基本は「その他の障害用(様式第120号の7)」を使います。ただし、がんの影響が呼吸器(肺がん)・循環器(心臓)・消化器・血液など特定臓器に主として現れている場合は、その臓器の専用様式(呼吸器なら第120号の5等)を使うことがあります。どの様式を使うかで認定結果が変わることもあるため、主治医と社労士で相談することをおすすめします。

Q3. がん治療中でも障害年金は申請できますか?

A3. できます。むしろ治療中こそ副作用や全身衰弱で就労・生活が困難になっている時期であり、認定を受けやすいケースが多いです。抗がん剤による強い倦怠感、末梢神経障害、骨髄抑制で外出困難な状態などは、しっかり診断書に記載してもらえば2〜3級認定の可能性があります。「治療が終わってから」と待つ必要はありません。

Q4. がんの初診日はいつになりますか?検診で発見された場合は?

A4. 「がんの症状(しこり・出血・体重減少等)で初めて医師にかかった日」または「がん検診で異常を指摘され、精密検査を受けた日」が初診日になります。検診で発見された場合は、(1)検診の受診日、または(2)検診結果を持って別の医療機関を受診した日、のいずれかが認められます。健康診断・人間ドックの結果通知書と、その後の受診記録を大切に保管しておいてください。

Q5. 人工肛門を造設したら自動的に3級になりますか?

A5. 人工肛門を造設した状態が6か月以上継続すれば、原則として障害厚生年金3級(会社員時代の初診日)または障害基礎年金の対象になります。ただし、造設のみで機能的支障が軽い場合は3級相当、他の合併症や治療の影響がある場合は2級相当と、状態によって等級が変わります。国民年金加入中の初診なら3級は対象外なので、抗がん剤の影響なども含めて2級を目指す申請設計が重要です。

Q6. がんが寛解した後も障害年金はもらい続けられますか?

A6. 寛解しても、後遺症(人工肛門・喉頭摘出・リンパ浮腫・骨髄抑制の後遺症など)が残り、日常生活または労働に著しい支障がある場合は継続受給できます。ただし、更新(再認定)時に状態が改善していると等級が下がったり支給停止になる可能性があります。寛解後も定期的な受診と診断書の記録を続けることが大切です。詳しくは障害年金の更新(再認定)完全ガイドもご参照ください。

まとめ

がんは障害年金の対象疾患であり、治療中でも受給できます。多くの方が「がんでは対象にならない」と誤解して申請を諦めていますが、それは大きな損失です。

本記事のポイント:

  • 3つのパターン:全身衰弱/治療の副作用/術後後遺症
  • 治療中こそ申請時期:症状が重い時期に認定されやすい
  • 診断書の様式選び:症状の主体に合わせて適切な様式を選ぶ
  • 初診日は「症状で最初にかかった日」:がん告知の日ではない
  • 人工肛門・喉頭摘出などの後遺症も対象になる
  • 寛解後も後遺症次第で継続受給可能
  • 迷ったら社労士に相談:認定率と精神的負担が大きく変わる

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