障害厚生年金と障害基礎年金の違い|どちらがもらえる?受給額比較を社労士が解説【2026年版】
「障害年金って、厚生年金と基礎年金の2種類あるらしい。自分はどっち?」――障害年金を調べ始めた方が、最初にぶつかる疑問です。
この2つは、名前が似ているだけで、もらえる金額も等級も加算金も大きく違います。しかも、どちらの対象になるかを自分で選ぶことはできません。「初診日」に加入していた年金制度で自動的に決まるためです。
この記事では、山口県長門市の社労士が、2つの年金の違いを図解と具体例で徹底比較します。どちらが対象になるか、いくらもらえるか、加算金はあるかまで、この記事1本で分かります。
1. 障害基礎年金と障害厚生年金の基本
日本の公的年金制度は、いわゆる「2階建て」の構造になっています。障害年金もこの構造に対応しています。
障害基礎年金
1階部分(国民年金)
- すべての国民が対象(20歳以上)
- 自営業・専業主婦・学生・無職も加入
- 会社員・公務員も自動加入
- 等級:1級・2級のみ
- 金額は定額(報酬に関係なし)
- 子の加算あり
障害厚生年金
2階部分(厚生年金)
- 会社員・公務員が対象
- 基礎年金に「上乗せ」される
- 等級:1級・2級・3級・障害手当金
- 金額は報酬(給料)に応じて変動
- 配偶者加給あり
- 1級・2級は基礎年金と両方もらえる
ポイント:2階建てを理解する
会社員が1級・2級の障害年金を受給する場合、「障害基礎年金(1階)+ 障害厚生年金(2階)」の両方が支給されます。金額が大きくなるのはこのためです。3級は障害厚生年金のみ(1階部分なし)です。
2. どちらの対象になるかは「初診日」で決まる
2つの年金のうちどちらの対象になるかは、「初診日」に加入していた年金制度で自動的に決まります。
初診日で判定する3ステップ
初診日を特定する
症状で初めて医師の診察を受けた日を確認。これが判定の起点です。
その日の職業・立場を確認する
会社員・公務員だったか?自営業だったか?専業主婦・学生・無職だったか?
対象の年金が決まる
会社員・公務員なら「障害厚生年金」、それ以外なら「障害基礎年金」の対象。
クイックチェック:初診日の職業と対象年金
- 会社員・公務員として厚生年金加入中 → 障害厚生年金(+ 基礎年金)
- 自営業・フリーランス → 障害基礎年金
- 専業主婦(会社員配偶者・第3号) → 障害基礎年金
- 学生・無職(国民年金加入中) → 障害基礎年金
- 20歳前(未加入期間) → 障害基礎年金(20歳前傷病)
- 60歳〜65歳未満(国民年金任意加入等) → 障害基礎年金
初診日の特定が難しい場合は障害年金の初診日とは?証明方法を、20歳前の傷病については20歳前傷病による障害基礎年金もご参照ください。
3. 受給額の違い(2026年度・完全比較)
もっとも気になる金額の違いを、2026年度の額で比較します。
障害基礎年金(定額)
| 等級 | 年額 | 月額(目安) |
|---|---|---|
| 1級 | 約 1,020,000円 | 約 85,000円 |
| 2級 | 約 816,000円 | 約 68,000円 |
障害厚生年金(報酬比例)
報酬比例部分は、これまでの給料と加入期間で計算されるため人によって異なります。基礎年金と両方支給されるのがポイント。
| 等級 | 基礎年金部分 | 厚生年金部分 | 合計イメージ |
|---|---|---|---|
| 1級 | 約 1,020,000円 | 報酬比例 × 1.25 | 150〜200万円 |
| 2級 | 約 816,000円 | 報酬比例 | 120〜160万円 |
| 3級 | なし | 報酬比例(最低保証 約61万円/年) | 60〜100万円 |
| 手当金 | なし | 報酬比例 × 2(一時金) | 約 163万円〜(一時金) |
報酬比例の目安
報酬比例部分は「平均標準報酬額 × 給付乗率 × 加入月数」で計算されます。目安として、平均給与30万円・加入10年の会社員なら、2級で年約80万円程度の上乗せがあります。詳しくは障害年金の金額はいくら?をご覧ください。
4. 等級の違い(1級・2級・3級・手当金)
もっとも大きな違いの1つが「等級の種類」です。
| 等級 | 状態の目安 | 基礎年金 | 厚生年金 |
|---|---|---|---|
| 1級 | 他人の援助を受けなければほとんど自分のことができない | ◯ | ◯ |
| 2級 | 日常生活が極めて困難で、労働で収入を得られない | ◯ | ◯ |
| 3級 | 労働が著しい制限を受ける状態 | × | ◯ |
| 手当金 | 3級より軽く、初診から5年以内に治癒し障害が残る | × | ◯(一時金) |
基礎年金には3級がない
自営業・専業主婦・学生などの方は障害基礎年金の対象ですが、3級相当の障害では受給できません。1級・2級の状態でなければ支給対象外です。一方、会社員は3級・手当金の受給も可能で、より軽い障害でもカバーされます。
5. 子の加算・配偶者加給の違い
家族がいる方向けの加算金制度も、2つの年金で異なります。
子の加算
(障害基礎年金)
- 1級・2級の受給者が対象
- 「18歳到達年度末までの子」
- または「20歳未満で1・2級の障害の子」
- 1人目・2人目:約234,800円/年
- 3人目以降:約78,300円/年
配偶者加給
(障害厚生年金)
- 1級・2級のみ(3級は対象外)
- 生計を維持する配偶者がいる場合
- 配偶者が65歳未満まで
- 約234,800円/年
- 子の加算は基礎年金側にプラス
6. 具体例で見るケース別受給額
実際のケースで、どちらの年金・いくら受給できるかを比較します。
会社員(35歳男性)がうつ病で2級認定
年収480万円で厚生年金加入10年。初診日は会社員時代。妻と子1人あり。
対象:障害厚生年金 + 障害基礎年金(2級)
専業主婦(40歳女性)が統合失調症で2級認定
会社員の夫の扶養(第3号被保険者)。初診日は結婚後の専業主婦期間。子2人あり。
対象:障害基礎年金(2級)のみ ※厚生年金は対象外
会社員(28歳女性)が発達障害で3級認定
年収320万円で厚生年金加入5年。初診日は会社員時代。独身。
対象:障害厚生年金(3級)のみ ※基礎年金は3級なし
学生(19歳男性)が知的障害で2級認定
20歳前傷病として申請。国民年金加入前で保険料納付要件なし。
対象:障害基礎年金(2級)※20歳前傷病
ケース①と②で年額が近い理由
ケース①は会社員なので厚生年金の上乗せがあるはずですが、配偶者加給と子の加算で加算金が大きくなっています。一方ケース②は基礎年金のみで報酬比例がないため、家族構成次第で総額に近くなることがあります。
7. 注意点・よくある落とし穴
① 初診日の年金加入状況で決まる(現在ではない)
「今は会社員だから厚生年金」ではありません。初診日の加入状況で決まります。転職・退職を挟んでいる場合は特に注意。
② 転職・退職時期の初診日はトラブルの元
退職翌日以降に初診日があると国民年金加入期間になり、障害基礎年金の対象に変わります。「会社員時代からうつの症状があった」場合は、症状の記録・受診歴を丁寧に確認しましょう。
③ 障害基礎年金の3級は存在しない
自営業・専業主婦の方が「軽度〜中度」の状態では受給できません。日常生活に大きな支障がある2級以上でないと対象外です。
④ 併合認定に注意
2つ以上の障害がある場合、「併合認定」でより上位の等級に認定されることがあります。3級相当の障害が2つある会社員は、2級に併合されて基礎年金も受給できるケースがあります。
8. よくある質問(FAQ)
Q1. 自分が障害厚生年金と障害基礎年金のどちらの対象か、どうやって判断しますか?
A1. 初診日(症状で初めて医師の診察を受けた日)に加入していた年金制度で決まります。会社員として厚生年金に加入していた期間に初診日があれば障害厚生年金、それ以外(国民年金加入・専業主婦・学生・自営業)なら障害基礎年金の対象になります。20歳前や国民年金第3号被保険者(会社員配偶者)の期間に初診日がある場合も障害基礎年金です。
Q2. 障害厚生年金3級と障害手当金の違いは何ですか?
A2. 障害厚生年金3級は永続的な年金(毎年支給)、障害手当金は一時金(1回だけ支給)です。3級より軽い障害で、初診日から5年以内に治癒し一定の障害が残った場合に障害手当金が支給されます。障害手当金の額は報酬比例部分の2倍で、最低保証額は基礎年金2級の2年分(約163万円)です。
Q3. 障害基礎年金には3級がないのはなぜですか?
A3. 制度設計上、国民年金は「基礎的な生活保障」を目的としているため、比較的軽い障害(3級)はカバーせず、日常生活に大きな支障がある1級・2級のみを対象としています。厚生年金は労働能力の喪失を補う保険的性格が強いため、労働制限がある3級も対象になっています。
Q4. 子の加算と配偶者加給は誰でももらえますか?
A4. 条件があります。子の加算は障害基礎年金1級・2級に「18歳到達年度末までの子」または「20歳未満で障害等級1・2級の子」がいる場合に加算されます。配偶者加給は障害厚生年金1級・2級のみで、生計を維持する65歳未満の配偶者がいる場合に加算されます。3級には配偶者加給はありません。
Q5. 厚生年金加入期間が短くても障害厚生年金は受給できますか?
A5. 初診日に厚生年金に加入していれば、加入期間の長短は問いません。たとえば入社して1か月で初診日があっても、他の要件(保険料納付要件など)を満たせば障害厚生年金の対象です。ただし報酬比例部分は加入月数が少ないと低くなるため、最低保証額(3級は年約61万円)が適用されます。
Q6. 自営業から会社員になった後に初診日がある場合はどうなりますか?
A6. 初診日に加入していた制度で決まるため、会社員として厚生年金に加入している間に初めて症状で医師にかかっていれば障害厚生年金の対象になります。自営業時代の症状と関連していても、あくまで初診日基準です。ただし「以前から症状があった」と診断書に書かれると初診日認定が争点になることがあるため、社労士に相談することをおすすめします。
まとめ
障害厚生年金と障害基礎年金は「初診日の年金加入状況」で自動的に決まり、名前は似ていても金額・等級・加算金が大きく異なります。
本記事のポイント:
- 初診日で決まる:会社員・公務員なら厚生年金、それ以外は基礎年金
- 2階建て構造:会社員の1・2級は基礎+厚生の両方が支給される
- 等級の違い:基礎は1・2級のみ、厚生は3級・手当金もある
- 金額の違い:基礎は定額、厚生は報酬比例で変動
- 加算金の違い:基礎は子の加算、厚生は配偶者加給
- 3級以下は基礎年金対象外:自営業・専業主婦は要注意
無料相談のご案内
「自分は厚生年金と基礎年金のどちら?」「転職期の初診日で悩んでいる」「いくらもらえるか具体的に知りたい」――そんな疑問は、初回相談無料でお気軽にご相談ください。
長門市・萩市・美祢市を中心に、自身も障害年金受給者である社労士が、あなたの状況に合わせて年金の種類・金額を具体的にお伝えします。
無料相談のお問い合わせ