双極性障害(躁うつ病)でも
障害年金はもらえる?
山口県の申請ガイド

双極性障害(躁うつ病)は障害年金の対象となる疾患です。この記事では、双極性障害での障害年金の認定基準、うつ病との違い、受給額、診断書作成のポイント、よくある失敗例を、山口県長門市の社労士が詳しく解説します。

1. 双極性障害は障害年金の対象になる

双極性障害(躁うつ病)は障害年金の対象となる疾患です。障害年金制度では、双極性障害は「気分障害」というカテゴリーに分類され、一定の要件を満たせば受給が可能です。

双極性障害とは?

双極性障害は、「躁状態(またはそう状態)」「うつ状態」を繰り返す精神疾患です。以前は「躁うつ病」と呼ばれていました。

  • 躁状態:気分が高揚し、活動的になる、睡眠時間が短くても平気、話が多くなる、衝動買いをするなど
  • うつ状態:気分が落ち込む、何もやる気が起きない、睡眠障害、食欲低下など

双極性障害で障害年金を受給できるケース

  • 医師による「双極性障害」または「躁うつ病」の診断がある
  • 躁状態・うつ状態により日常生活や就労に著しい支障がある
  • 初診日から1年6か月以上経過している
  • 初診日に公的年金に加入していた
  • 保険料の納付要件を満たしている

2. 双極性障害とうつ病の違い

双極性障害とうつ病は、症状が似ているため混同されやすいですが、障害年金の申請では明確に区別される必要があります。

双極性障害とうつ病の比較

項目 うつ病 双極性障害
症状 うつ状態のみ 躁状態 + うつ状態
気分の変動 基本的に低調 高揚と低下を繰り返す
躁状態の有無 なし あり(重要な判断基準)
治療薬 抗うつ薬が中心 気分安定薬(リチウム等)が中心
診断の難しさ 比較的診断しやすい 躁状態を見逃しやすい

診断の重要性

双極性障害は、うつ状態で受診することが多く、躁状態が見逃されることがあります。そのため、当初「うつ病」と診断されていても、後に「双極性障害」と診断が変わるケースがあります。

障害年金の申請では、最新の正確な診断名が重要です。診断名が変わった場合は、その経緯を病歴・就労状況等申立書に記載する必要があります。

双極性障害の種類

双極性障害Ⅰ型

激しい躁状態が現れるタイプ。躁状態の時は、入院が必要になるほど症状が重く、日常生活に著しい支障をきたします。

  • 躁状態:1週間以上続く激しい症状
  • 社会生活や対人関係に深刻な影響
  • 入院治療が必要なことが多い

双極性障害Ⅱ型

軽躁状態が現れるタイプ。Ⅰ型ほど激しい躁状態ではなく、本人や周囲が気づきにくいことがあります。

  • 軽躁状態:4日以上続く軽度の躁症状
  • 日常生活は何とか維持できる
  • うつ状態が主な症状

障害年金の認定におけるポイント

Ⅰ型とⅡ型の違いは、障害年金の認定基準に直接影響しませんが、躁状態の程度が診断書に記載されることで等級判定に影響します。重要なのは、躁状態・うつ状態それぞれの日常生活への影響を正確に医師に伝えることです。

3. 障害年金の受給条件(3要件)

障害年金を受給するには、以下の3つの要件を満たす必要があります。

① 初診日要件

初診日に公的年金(国民年金または厚生年金)に加入していることが必要です。

  • 初診日:双極性障害で初めて医師の診療を受けた日
  • 心療内科や精神科を初めて受診した日が初診日となります

重要ポイント

初診日が国民年金加入中か厚生年金加入中かで、受給できる年金の種類が変わります。

  • 国民年金加入中:障害基礎年金(1級・2級のみ)
  • 厚生年金加入中:障害厚生年金(1級・2級・3級)+障害基礎年金(1級・2級の場合)

② 保険料納付要件

初診日の前日時点で、以下のいずれかの要件を満たしていることが必要です。

  • 原則要件:初診日の前々月までの加入期間のうち、3分の2以上の期間で保険料を納付または免除されていること
  • 特例(直近1年要件):初診日に65歳未満の場合、初診日の前々月までの直近1年間に保険料の未納がないこと

③ 障害状態要件

障害認定日(原則として初診日から1年6か月後)に、障害等級(1級・2級・3級)に該当する障害状態であることが必要です。

  • 障害認定日時点の診断書が必要
  • 認定日時点で等級に該当しなくても、その後に症状が悪化した場合は事後重症請求が可能

4. 双極性障害の認定基準

双極性障害などの精神疾患の障害年金認定には、「等級判定ガイドライン」が用いられます(2016年導入)。

等級判定の2つの指標

① 日常生活能力の判定(7項目・4段階)

以下の7項目について、できる程度を1~4点で評価し、その平均値で判定します。

項目 評価内容
1. 食事 適切な食事の準備・摂取ができるか
2. 身辺の清潔保持 入浴・洗顔・着替えなどができるか
3. 金銭管理と買い物 計画的な金銭管理や買い物ができるか
4. 通院と服薬 規則的な通院・服薬管理ができるか
5. 対人関係 他人との意思疎通・協調ができるか
6. 身辺の安全保持 危険を回避する能力があるか
7. 社会性 社会的な手続きや公共施設の利用ができるか
評価段階
  • 1点:できる
  • 2点:おおむねできるが時々助けが必要
  • 3点:助けがあればできる
  • 4点:できない

② 日常生活能力の程度(5段階)

日常生活や社会生活の制限の程度を、以下の5段階で総合評価します。

  • (1) 日常生活や社会生活に制限を受けることなく、ほぼ問題なく過ごせる
  • (2) 日常生活や社会生活に一定の制限を受けるが、概ね自立している
  • (3) 日常生活に援助を必要とし、社会生活には著しい制限がある
  • (4) 常時援助が必要で、一人での日常生活が困難
  • (5) 身の回りのことはほとんどできず、常時援助が不可欠

等級の目安

等級 日常生活能力の判定(平均) 日常生活能力の程度
1級 3.5以上 (5) または (4)
2級 3.0~3.4 (3) または一部 (4)
3級 2.0~2.9 (2) または一部 (3)

この表は目安です。最終的には総合的に判断されます。

双極性障害特有のポイント

双極性障害の場合、躁状態とうつ状態の両方を評価する必要があります。

  • 躁状態の評価:衝動的な行動、金銭管理の困難、対人関係のトラブル、判断力の低下
  • うつ状態の評価:気分の落ち込み、意欲低下、日常生活の困難
  • 気分の波の評価:どれくらいの頻度で躁状態⇔うつ状態が切り替わるか

診断書には、現在の状態だけでなく、過去1年間の気分の波も記載されることが重要です。

5. 障害年金の受給額(2025年度)

2025年度の障害年金額は、前年度比で1.9%引き上げとなっています。

障害基礎年金の金額

2級 約83万円/年(月約6.9万円)
1級 約104万円/年(月約8.7万円)

子の加算額

18歳年度末(高校3年生の3月31日)までの子どもがいる場合、加算があります。

  • 1人目・2人目:各約24万円/年
  • 3人目以降:各約8万円/年

障害厚生年金の金額

初診日に厚生年金に加入していた場合、障害厚生年金も受給できます。障害厚生年金は報酬比例で計算されるため、加入期間や平均給与によって金額が異なります。

合計受給額の目安

障害厚生年金1級・2級の場合、障害基礎年金障害厚生年金の両方を受給できるため、合計で年間150万円以上になることもあります。

受給額の具体例(障害基礎年金2級の場合)

家族構成 年額 月額(目安)
本人のみ 約83万円 約6.9万円
本人+子1人 約107万円 約8.9万円
本人+子2人 約131万円 約10.9万円
本人+子3人 約139万円 約11.6万円

金額は2025年度の概算です。詳細は年金機構の最新情報をご確認ください。

6. 診断書作成のポイント

障害年金の認定において、診断書は最も重要な書類です。双極性障害の場合、躁状態とうつ状態の両方を正確に記載することが重要です。

医師に伝えるべきこと

診断書を作成するのは医師ですが、日常生活の困難な状況を患者自身が具体的に伝えることが重要です。

躁状態の時の症状

  • 睡眠:睡眠時間が極端に短い、2~3時間しか眠らなくても平気
  • 活動性:じっとしていられない、次々と予定を入れる、落ち着きがない
  • 金銭管理:衝動買いをする、高額な買い物をする、借金をする
  • 対人関係:喧嘩が増える、攻撃的になる、周囲とトラブルが起きる
  • 会話:話が止まらない、話題が次々と変わる、声が大きくなる
  • 判断力:衝動的な行動、リスクを考えない、無謀な行動

うつ状態の時の症状

  • 食事:食欲がない、食事の準備ができない、栄養が偏る
  • 清潔保持:入浴できない、着替えを何日もしない、部屋が散らかる
  • 意欲:何もやる気が起きない、外出できない、ベッドから起き上がれない
  • 睡眠:眠れない、または過眠(1日中寝ている)
  • 対人関係:家族以外との会話が困難、電話に出られない

気分の波について

  • 頻度:どれくらいの期間で躁⇔うつが切り替わるか(例:3ヶ月に1回、半年に1回など)
  • 持続期間:躁状態・うつ状態はそれぞれどれくらい続くか
  • 最近の状態:過去1年間の気分の波を具体的に説明(日記やメモがあると良い)

やってはいけないこと

  • 躁状態の時の症状を過小評価する
  • 「躁状態の時は元気です」とだけ伝える
  • うつ状態の症状だけを伝える
  • 診察時だけ良い状態を見せる

躁状態とうつ状態の両方の困難を正直に伝えることが重要です。

おすすめの方法

  • メモを用意する:躁状態・うつ状態それぞれの症状をメモしておき、医師に見せる
  • 気分の記録:日記やアプリで気分の波を記録しておく
  • 家族と一緒に受診:客観的な視点から日常生活の状況を伝えてもらう

7. よくある失敗例と対策

失敗例1:躁状態の症状が診断書に記載されていない

Aさんのケース(30代・双極性障害Ⅱ型)

状況:診察時はうつ状態で受診することが多く、医師に躁状態(軽躁状態)のことを十分に伝えていなかった。診断書には「うつ状態が主」と記載され、躁状態の記載がほとんどなかった。

結果:「うつ病」として判断され、等級が低く評価された。3級認定。しかし初診日が国民年金加入中だったため、支給なし(障害基礎年金には3級がないため)。

対策

  • 躁状態の記録を作成:日記やメモで躁状態の時の行動を記録しておく
  • 家族から医師に説明:家族が医師に躁状態の様子を伝える
  • 診断書作成前に確認:社労士に相談し、どのような点を医師に伝えるべきか確認する

失敗例2:気分の波の頻度が記載されていない

Bさんのケース(40代・双極性障害Ⅰ型)

状況:診断書に「双極性障害」と診断名は記載されていたが、気分の波の頻度や持続期間の記載がなく、「最近の状態」しか記載されていなかった。

結果:審査で「一時的な症状」と判断され、不支給となった。

対策

  • 過去1年間の気分の波を記録:いつ躁状態・うつ状態になったか、どれくらい続いたかを記録
  • 医師に記録を見せる:気分の記録を医師に見せて、診断書に反映してもらう
  • 病歴・就労状況等申立書に詳しく記載:過去の気分の波の経過を詳細に記載する

失敗例3:「うつ病」と「双極性障害」の診断名が混在

Cさんのケース(50代・双極性障害)

状況:当初「うつ病」と診断されていたが、その後「双極性障害」に診断が変わった。しかし、診断名が変わった経緯が病歴・就労状況等申立書に記載されておらず、初診日の証明も「うつ病」での受診日となっていた。

結果:審査で「診断名が不明確」として、追加資料の提出を求められ、審査が大幅に遅れた。

対策

  • 診断名の変更経緯を記載:病歴・就労状況等申立書に、いつ・なぜ診断名が変わったかを詳しく記載
  • 最新の診断名で統一:診断書には最新の診断名(双極性障害)を記載してもらう
  • 初診日の一貫性:初診日は「うつ病」で受診した日でも問題ないが、その後の経過を明確にする

重要な注意点

双極性障害は、診断が変わることが多い疾患です。診断名の変更があった場合は、その経緯を明確に説明することが重要です。社労士に相談して、適切な申請書類を作成することをおすすめします。

8. よくある質問(FAQ)

双極性障害とうつ病の違いは何ですか?

うつ病は「うつ状態」のみが続きますが、双極性障害は「躁状態(またはそう状態)」と「うつ状態」を繰り返します

躁状態では、気分が高揚し、活動的になり、睡眠時間が短くても平気、話が多くなる、衝動買いをするなどの症状が現れます。診断書では、両方の状態を記載することが重要です。

双極性障害でも働いていたら障害年金はもらえない?

いいえ、働いていても障害年金を受給できる可能性はあります。

重要なのは日常生活や就労上の困難度です。以下のような場合は、受給の可能性があります。

  • 障害者雇用での就労
  • 短時間勤務(週3日、1日4時間など)
  • 上司や同僚の援助を受けながらの勤務
  • 頻繁な欠勤や休職がある

就労状況は診断書に詳しく記載されることが大切です。

双極性障害Ⅰ型とⅡ型で障害年金の認定に違いはありますか?

Ⅰ型とⅡ型の違いは認定基準に直接影響しませんが、躁状態の程度が診断書に記載されることで等級判定に影響します。

Ⅰ型は激しい躁状態(入院が必要なレベル)、Ⅱ型は軽躁状態です。重要なのは、躁状態・うつ状態それぞれの日常生活への影響を正確に医師に伝えることです。

躁状態の時は元気なので、障害年金はもらえないのでは?

いいえ、躁状態の時も日常生活に支障があれば対象となります。

躁状態では、衝動的な行動、金銭管理の困難、対人関係のトラブル、判断力の低下などがあります。これらは日常生活や社会生活に著しい支障をきたすため、障害年金の対象となります。

診断書には躁状態の具体的な症状を記載することが重要です。

双極性障害の診断書で注意すべきポイントは?

最も重要なのは、躁状態とうつ状態の両方の症状を記載することです。

また、気分の波の頻度(どれくらいの期間で躁⇔うつが切り替わるか)、日常生活への影響(金銭管理、対人関係、睡眠リズム等)、就労状況(欠勤頻度、業務遂行能力)を具体的に記載してもらうことが大切です。

双極性障害の障害年金はいくらもらえますか?

障害基礎年金2級で年約83万円(月約6.9万円)、1級で年約104万円(月約8.7万円)です。

初診日に厚生年金に加入していた場合は、障害厚生年金も受給でき、合計で年間150万円以上になることもあります。

18歳年度末までの子どもがいる場合は子の加算(1人目・2人目は各約24万円/年)も受けられます。

9. まとめ

この記事のポイント

  • 双極性障害は障害年金の対象(気分障害に分類)
  • うつ病との違い:躁状態とうつ状態を繰り返す
  • 受給には3要件(初診日・保険料納付・障害状態)を満たすことが必要
  • 認定には等級判定ガイドラインが用いられる
  • 診断書は最も重要。躁状態とうつ状態の両方を記載
  • 気分の波(頻度・持続期間)を正確に伝える
  • 働いていても受給可能な場合がある
  • 診断名の変更があった場合は経緯を明確にする

注意すべきポイント

  • 躁状態の症状を過小評価しない
  • うつ状態の症状だけを伝えない
  • 気分の波の記録を怠らない
  • 診断名の変更経緯を曖昧にしない

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